2019/2/3
SKY-HI The JAPRISON TOUR
会場内に“運命論”が響き渡り
その曲の終わりと共に辺りが暗闇に包まれた
The JAPRISON TOUR 開幕だ
今回のツアーのモチーフは監獄
看守が囚人番号を呼ぶと同時に
スクリーン裏のステージへ
SKY-HIのバンド隊SUPER FLYERSが入場する
ちなみにこの番号はそれぞれの誕生日だと推測されるが
1人754(?)番と呼ばれていたため 正確な意味合いは不明
看守が「1212番」と連呼する、が彼の姿はそこには無い
血眼で脱獄犯を探す看守
次第に緊張感を増す音響と照明
突如訪れた静寂の中
1212番の正体がスクリーンに映し出される
SKY-HI────
一体彼はどこへ。
“What a Wonderful World!!”のイントロが流れ
スクリーンに映像が映し出される
彼の歌声は聴こえるが 彼の姿はそこには無い
スクリーンの裏側の世界はまだ見せてくれないようだ
曲が終わりに差し掛かった時 彼は叫んだ
「I just wanna be me」と 何度も何度も
そのセリフを合図に“Shed Luster”の演奏が始まる
すると スクリーンが下から上へとロールアップし始めた
スクリーンの裏側の世界は意外にも殺風景で
物悲しさを感じさせる
ステージの中央にはSKY-HI
マイクスタンドの後ろでまるで人生に苦悩し
絶望しているかのように前屈みになっている
黒い衣装に身を包みフードを被ったその姿は
やつれた囚人さながらだった
後ろのミニスクリーンには“Shed Luster”の文字
歌い始めた彼は手に手錠をしていた
その両手を上に掲げ 手錠がライトに照らされる
「道に光あれ」 の言葉と共にその手錠を破壊し
彼を拘束するものは無くなった
そのまま“As a Suger”へと続き
SKY-HIの代名詞“Turn Up”が始まる
高速ラップスキルは今も健在であり
もはや元の1.5倍速程だ 圧巻である
今回のためにアレンジも加えられ
彼のこのツアーに対する思い入れが
他ならないことを思い知らされる
高速ラップを終え次はなにかと身構えた時
彼が歌い出したのはまさかの“Dystopia”だった
「何も変わらない 何も変わらないぜ」と歌う
コーラスのKayoさんと悠歩さん
彼は声を絞り出すように言った
「I'm SKY-HI 多分何度死んだって変わらない」
曲が終わったあと訪れる静寂
彼はマイクスタンドを杖のように持ち
それを階段に突き刺すように
一歩一歩踏みしめながら降りてきた
そして縦横無尽にステージの上を歩き回りながら
“何様”を歌った
彼は叫ぶ この世の不条理と病的な世論を
そこから“F-3”が始まり
SKY-HIの「手の平を見せてくれ」の言葉を合図に
これまで私を拘束していた魔法は解けた
だがまた“The Story Of J”で会場は不穏な空気に包まれ私はまた大きな力に動きを封じ込められた
曲の終わりと共にSKY-HIは床に倒れ
ミニスクリーンには某RPGゲームのような
コンティニューやスタートの選択肢が映し出される
コンティニューを選択した私達はまたゲームを再開する
“Role Playing Soldier”のイントロが流れると共に
SKY-HIのバックダンサー達BFQが登場し
パフォーマンスに彩りを添える
歌詞にある「画面の向こう側にSay Hi」のところで
画面から飛び出すようなダンスを踊りながら
7色の照明が客席の方に向けられるなど
リリックを可視化する表現力に感嘆した
最後のシーンで、周りのモンスターたちが倒されていく中
1人最後まで戦い続けるモンスターを模したダンスは
とても素晴らしかった
モンスターであるSKY-HIは
「これは本当に正しいことなのだろうか」
とでも言うような顔で戦い続け最終的に1人取り残される
なんともメッセージ性の深いパフォーマンスだった
ここから渾身のパフォーマンスが続き
今回のアルバムJAPRISONの中で
私が1.2位を争うくらいお気に入りの
“Persona”のイントロが流れた
SKY-HIの気だるげな歌声とダンスが歌詞と相まって
息をするのも辛いほど会場の空気は重苦しくなる
仮面をして踊るBFQ
それに対抗し声で威嚇するSKY-HI
あのピリついた空気は今思い返すだけでも戦慄が走る
そしてまた数曲を挟み
このJAPRISONという作品の要となる
“What a Wonderful World!!”を歌い終え
彼は舞台袖へと消えていった
と、ここまでつらつらとこのThe JAPRISON TOURの概要を書いてきたが
この前半に今までずっと私がSKY-HIに求めていたモノ全てが凝縮されていた
まるで長編小説を読んでいるかのようで
オープニングから鳥肌が止まらず
声も出せないほどに私は彼に魅せられていた
ずっとずっと彼の心の闇を知りたいと思っていた
それが形となって現れたこのツアーは
彼にとっても私にとっても大切なものなのである
この時私は丁度自律神経失調症を患っていて
死にたくはないけど生きたくもないと思う日々が続いていた
何をしても満たされず
一体私は何をしているのだろうと苦悩する毎日だった
だがそんな状態だった私をこのライブを通して
あるSKY-HIの曲が救ってくれた
“I Think, I Sing, I Say”
ラスサビに入り私は初めて
「どうやらこの世界は君が思ってるより優しい」
「明日も捨てたもんじゃないね」と歌詞を声に出した
その瞬間私の目から涙が溢れてきて
まるで誰かに抱きしめられたように
なにか温かいものが自分を包んだ
きっと私のことを包んだのはもう1人の自分で
私の引っ掻いて掻きむしってボロボロになった傷口を
塞いでくれたのだろう
その時に私はやっと自分自身を愛せたような気がした
SKY-HIの弱い所を全てさらけ出して作られたJAPRISON
彼はキリストさながら
自ら痛みを伴うことによって私を救ってくれた
このライブのラスト1曲に“I Think, I Sing, I Say”を選曲してくれたこと、そしてライブの最後にスクリーンにあの言葉を残してくれたことには感謝しかない
“LIVE YOUR LIFE”
辛くなった時は、生きるのが嫌になった時は
この言葉を思い出して 今も私は私の人生を生きている
私はこの「音楽に救われた日」を決して忘れない
全てが終わり迎えたカーテンコール
彼はSUPER FLYERS全員を舞台袖へ捌けさせ
1人舞台の中央へ佇む
そして私達に笑顔で手を振りながら
また監獄の中へと戻っていった
彼が何を思ってこのような悲しい結末を設計したのか
私には到底理解し難い
だからこそ、だからこそ良いのだ
アーティストは理解されなくて当然なのだ
例え理解できなくても理解したいと思う気持ちが
根本にあるから私はまた今日も彼に導かれ魅了されていく
まだまだ彼が飽きさせてくれることは無さそうだ
PHOTOS byハタサトシ